大いなる変化
価格と呼値
急激な価格変化に対して、出来高がもたらす影響は以前よりも大きなものになっている。例えば、1つの大きなオーダーが入ると、ごく短い時間で株価が「ストップ安」になったりまた元の水準に値を戻すということが起こり得る。図2は1月7日における或る銘柄の値動きの例である。このような変化は、取引所の付合せスピードがそれまで3秒に一回であったのが、即時処理になったことによってさらに増幅されている。また、出来高追随型ストラテジーのスピードがより速くなり、出来高の急激な変化に追随しようとすることによる影響も重要である。

ひとたび大きなオーダーによって株価が動かされると、すぐに起きることは突然のビッド/アスクスプレッドの拡大である。この現象を利用することにより、出来高の急激な変化の直後に執行を行うことを避けることができるかもしれない。とはいうものの、日本の市場においては、板の厚い銘柄に関して、多くのストラテジーがスプレッドをクロスしないで済む範囲で最大限、板上での優先順位を確保しようとする。つまり、たった2つの似た動きをするストラテジーが同じ銘柄について動いているだけで、スプレッドが瞬時に狭められるということが起きうるのである。例として、図3にあるようなケースを想定してみよう。100円ビッド、101円アスクという板に大きな売注文が入り、96円(-4%)まで株価が動いたとする。仮に、101円に2つの似た動きをする売のストラテジーがあったとしよう。単純化のためここではそのストラテジーを「優先順位確保ストラテジー」と呼ぶことにする。両方のオーダー(それぞれ100株)は常に最大の優先順位を確保しようとして、他の注文より前に出よう(指値を下げよう)とする。スプレッドの拡大の後すぐに、自らがアスクとなって優先順位を確保できるように一つのオーダーが指値訂正を行う(図3では98円)。すると、そこですぐにもう一つのオーダーはさらに一歩前に出ようとして最初のオーダーの1ティック下へと指値訂正を行う。結果として数ミリ秒の間に、スプレッドは最も縮小され95/96円となってしまうため、一時的かつ急激な株価変化の判断にスプレッド拡大の情報を利用することは難しくなってしまう。最終的には、株価は100/101円よりも4%下で相当の出来高が発生したのちにもとの水準に戻ることになる。
こういった状況で、トレーダー達は、望ましくない価格帯で関与しすぎることを避けるために、I SやPOV(Participation of Volume)といったストラテジーよりも短時間で設定されたVWAPを重宝するようになってきている。つまり、過去数年に渡って続いてきた、VWAP/TWAPからISやその他、流動性確保型ストラテジーへのシフトが、この一月は逆行したといえる。
より洗練された反ゲーミングのロジックや、価格の急激な変化に効果的に対応できるロジックがまもなく利用できることになるであろう。そうなれば、ISや流動性確保型ストラテジーへのシフトが進むに違いない。
スプレッド
トレーディングコストにおける最も好ましい変化としては、執行コストとビッド・オファーのスプレッドの間には直接的な関係があることが挙げられる。平均的なパフォーマンスのVWAPエンジンの執行コストはスプレッドの約20%だといわれている。
日経平均構成銘柄のスプレッドの平均値が25%縮小されれば、それに比例してトレーディングコストが小さくなる効果が生まれる。2000円から3000円の水準にある銘柄にとっては5倍もスプレッドコストが減少したことになるので、これは大きな変化である。


